ただの舌たらず？滑舌の悪さの原因
子どもが言葉を上手に発音できないところを見ると、なんだか微笑ましい気持ちになりますよね。小さな子どもの場合は、舌たらずなところが愛嬌として捉えられるからです。けれども、舌たらずの度合いが強かったり、年齢が高くなっても言葉を上手に発音できなかったりする場合は、何らかの異常が存在するかもしれません。こここではそんな滑舌の悪さの原因について詳しく解説します。
そもそも舌たらずとは
舌たらずとは、舌の筋力や運動量が足りないことで、言葉を上手に発音できない状態です。舌たらずは「滑舌が悪い」と表現されることもあります。具体的には、サ行、タ行、ラ行、ナ行の言葉を発音する時に、滑舌が悪くなりがちです。これらはいずれも発音する時に舌を運動させなければならない単語です。
舌たらずの原因
舌たらずは、何らかの理由で舌の動きが弱い、あるいは制限されることで起こります。その背景には、以下に挙げるような要因が潜んでいます。
舌の動きを制限する「舌小帯短縮症」
舌たらずの原因となりやすい異常に「舌小帯短縮症（ぜつしょうたいたんしゅくしょう）」というものがあります。鏡で確認するとわかりやすいかと思いますが、私たちの舌は、舌小帯と呼ばれる紐のような組織で、お口の底面である口腔邸に固定されています。この小帯が短いと、舌の動きが制限されて、舌たらずとなるのです。ちなみに、舌小帯短縮症は、発育異常の一種です。
舌の筋力がたりない
舌の大半は、舌筋と呼ばれる筋肉で構成されています。食べる時、しゃべる時、飲み込む時などに複雑な運動を見せる舌には、十分な筋肉が備わっているのです。けれども、舌筋の発育が悪かったり、使用する機会が少なかったりすると、筋力は衰えていきます。言葉を発音する際に必要となる筋力も確保できず、舌たらずとなってしまいます。
お口周りの筋肉がたりない
発音する際に必要となる筋肉は、舌筋だけではありません。口輪筋や頬筋を始めとした表情筋も適切に連動することで、発音もきれいになります。ですから、顔面やお口周りの筋肉が未発達な場合も舌たらずとなることがあります。
舌が短い・長い
舌が標準よりも短い、あるいは長い場合も発音に支障が現れます。舌は適切な長さでなければ、正しく発音することが難しいのです。ちなみに、舌の長さの異常は、遺伝的要因が強いといえます。
歯並びが悪い
舌たらずの原因として、忘れてはいけないものに「悪い歯並び」があります。標準的な形の舌で、運動も正常に行える場合であっても、歯並びが乱れていると舌たらずになりやすいです。例えば、サ行の言葉を発音してみるとわかりますが、舌が歯のいろいろな部位に当たります。これは正常な現象で、むしろ舌が歯に当たらない、あるいは強く当たり過ぎてしまうような歯並びは、発音障害をもたらします。
舌たらずを治す方法は？
舌たらずを治す方法は、原因によって変わってきます。
舌小帯を切除する治療方法
舌小帯短縮症が原因で舌たらずになっているケースでは、舌小帯を外科的な処置によって切除することで、舌たらずの症状を改善できます。
舌の筋力トレーニング
舌の筋力が足りていないケースでは、舌筋を鍛えるトレーニングを実施することで、舌が滑らかに動くようになり、滑舌も改善されます。比較的簡単に行える舌たらずの改善方法です。
お口周りの筋肉のトレーニング
口腔周囲筋が未発達、あるいは衰えているケースも、トレーニングで改善できます。歯科医院では、口腔周囲筋を効率良く鍛える方法を指導することができます。
歯並びの治療
舌たらずの原因として意外に多いのが歯並びの異常です。とくに歯列が狭かったり、短かったりすると、舌の動きが制限されやすく、発音障害が現れやすいです。そうしたケースでは矯正治療が有効となります。
子どもの頃に受ける方が良い？
歯並びの異常で舌たらずとなっている場合は、まず小児歯科の先生に相談しましょう。早期に矯正することによって、歯並びや発音の異常を根本から解決できるかもしれません。小児期は、骨格的なアプローチが可能であり、顎の骨の発育を正常な方向へと誘導できます。
言語能力は子どもの頃に培われるもの
お子さまに舌たらずの症状が認められる場合は、早めに対処した方が良いです。なぜなら、言語能力も小児期に培われるからです。滑舌が悪くなる原因を放置すると、悪い発音が身に付いてしまい、改善するのが難しくなります。柔軟性の高い小児期であれば、舌たらずを無理なく、治していくことも可能です。
まとめ
このように、舌たらずの原因は、極めて多岐にわたりますので、まずは歯医者さんで精査してもらうことが大切です。舌たらずの原因がわかれば、最適といえる治療法もご提案できます。舌たらずはあくまでひとつの症状であり、その背景にはさまざまな異常が潜んでいる場合も珍しくありませんのでご注意ください。
