学校の歯科検診 子どものお口を守る対策
そもそも学校歯科検診とは?
学校歯科検診とは、毎年6月30日までに行われる検診で、就学しているお子さまは基本的に全員が受けることになっています。通常の歯科検診とは異なる点が多々あり、戸惑う親御さまも多いことでしょう。
学校歯科検診では何を調べているの?
学校歯科検診は、ひとり当たりにかけられる時間が極めて短くなっています。そのため、調べられる範囲もかなり限定してしまうものなのです。具体的には、以下の項目について歯医者さんが調べます。
むし歯の有無
むし歯があるかどうかは、学校歯科検診で調べることができます。むし歯の進行度などは詳しく診査することはできないため、むし歯の存在を指摘されたら、必ずかかりつけ歯科医に診てもらいましょう。
歯茎の状態
学校歯科検診では、歯茎の炎症などについても調べることができます。子どもも歯肉炎にかかることがあるので、この検査項目も重要です。とりわけ「萌出性歯肉炎(ほうしゅつせいしにくえん)」には十分注意する必要があります。
歯並びの状態
発育期の歯並びの状態は、定期的にチェックする必要があります。歯並びがデコボコになる叢生(そうせい)はよく見られますが、骨格的な異常による出っ歯や受け口などにも注意しなければなりません。学校歯科検診では、一見してわかるような歯並びの異常しか発見できませんので、気になる症状がある場合は、個人的に歯医者さんを受診しましょう。
歯の本数・生える時期の異常
学校歯科検診では、乳歯および永久歯の本数もしっかりカウントします。大きな異常が認められた場合は、検診の用紙に記載されます。
スクリーニング検査としての検診
学校歯科検診は、あくまでスクリーニング検査です。むし歯や歯周病、歯の発育異常の有無を大まかに調べるための検査なので、病変を見落とすことも多々あります。なぜなら、学校歯科検診には以下の制約がかかっているからです。
生徒1人にかけられる時間はごくわずか
一般の歯医者さんで受ける歯科検診は、数十分の時間をかけてきっちりお口の中を調べていきますよね。歯周病検査などは、すべての歯の歯周ポケットに歯周プローブを挿入していきます。一方、学校歯科検診は、数百人を一度に検査しなければならず、生徒1人あたりに賭けられる時間はごくわずかです。
検診は体育館などで行われる
通常の歯科検診は、ユニットチェアに仰向けになってもらい、専用のライトで口腔内を照らした上で検査します。そのため、歯医者さんが病変を見逃すことはまずありません。その点、体育館や空き教室などで行われる学校歯科検診は、採光が悪く、児童も正面を向いた状態で検査するため、正確性も著しく低下します。それだけに、スクリーニング検査としての意義しか付与することができないのです。
そうまでして検診する意義とは?
上述したように、学校歯科検診に正確性を求めるのは困難です。場合によっては、大きな病変を見逃してしまうこともあるかもしれません。それならば、わざわざ全生徒を集めて検診する意味はないのでは?と思われる方もいらっしゃることでしょう。ただ、歯科医師の立場からすると、そうした結論には至りません。というのも、学校歯科検診を実施することで、以下に挙げるようなメリットが得られるからです。
お口の異常の早期発見につながる
学校歯科検診では、むし歯や歯周病だけではなく、歯の本数や萌出時期の異常なども早期に発見することができます。普段生活している中では自覚できない、あるいは周囲の大人が気付いてあげられないことも多いため、学校歯科検診を行う意義は極めて大きいといえます。
お口の健康に関する有益なデータが得られる
学校歯科検診で得られた結果は、市町村や国単位で集計して、情報の整理を行います。それがデータとして蓄積され、子どものたちのお口がどのような状態にあるのかを把握することが可能となるのです。例えば、子どものむし歯の本数は、年々減っていく傾向にありますが、そうした分析は学校歯科検診を継続的に行っているからこそ行えるものなのです。国や地方自治体は、そのようなデータをもとに、子どものお口の健康を守るための対策をとります。
学校検診で異常を指摘されたら
学校歯科検診で何らかの異常を指摘されたら、できるだけ早く歯医者さんに診てもらいましょう。検診の結果によっては、CO(要観察歯)やGO(歯周疾患要観察者)などの記載があり、積極的な治療が不要なことも多いです。とはいえ、専門家による定期的な観察が必要と診断されていますので、適切な頻度でかかりつけ医を受診するよう努めましょう。
まとめ
このように、学校歯科検診はあくまでスクリーニング検査ではありますが、子どものお口の健康を守る上で重要な役割を果たしています。親御さまはその点を理解した上で、学校歯科検診の結果を受け止めましょう。